イカの豆知識を知ると、刺身や寿司がもっと面白くなる
私にとって、イカは寿司ネタの中で一番といってもよいほど好きな存在です。鮮度のよいイカを噛んだときの、すっと歯が入る心地よい食感。少し寝かせたイカの、舌にまとわりつくようなねっとり感。どちらにも違ったおいしさがあり、同じイカでも状態や種類によって印象が大きく変わります。
スルメイカ、ヤリイカ、ケンサキイカ、アオリイカ、コウイカ。寿司店や鮮魚売り場にはさまざまなイカが並び、それぞれ甘み、厚み、歯切れ、弾力が異なります。種類が豊富で、刺身や寿司から焼き物、煮物、塩辛まで使い道が広く、比較的手に取りやすいこともイカの大きな魅力です。
ところが、生き物としてのイカに目を向けると、食材としての印象からは想像しにくい特徴が次々に出てきます。心臓は3つあり、血液は青色。周囲に合わせて体色や模様を変え、海水を噴射して泳ぎます。8本の腕とは別に、獲物を捕まえるための長い触腕も2本持っています。
この記事では、イカの体の仕組み、色が変わる理由、寿命、代表的な種類、寿司での食感の違い、栄養、旬、鮮度の見分け方まで、魚介好きなら知っておきたい豆知識をまとめます。
日本人は今もイカをたくさん食べている?
以前は「日本人は世界でも特にイカをよく食べる」といわれていました。実際、水産庁の資料では、平成元年にあたる1989年頃には、家庭で購入される生鮮魚介類の上位をイカやエビが占めていました。
しかし近年は、よく購入される魚介類の顔ぶれが変わり、サケ、マグロ、ブリが上位を占めています。昔と比べると、家庭で生鮮イカを買う量は減り、「日本で最もよく食べられる魚介類の一つ」というかつての立ち位置からは変化しています。
イカだけでなく、日本人の魚介類消費そのものが減っている
イカの人気だけが急に失われたわけではありません。日本の食用魚介類の1人当たり年間消費量は、2001年度の40.2キログラムをピークに減少し、2023年度には21.4キログラムとなりました。約20年でほぼ半分まで減った計算です。
2024年に二人以上の世帯が購入した生鮮魚介類は、1世帯当たり年間18.1キログラムで、前年から2%減少しました。魚介類全体の価格上昇、調理や後片付けの手間、肉類や調理済み食品の選択肢が増えたことなどが、購入量減少の背景にあると考えられています。
ただし、これらは主に家庭で購入する生鮮魚介類の統計です。寿司店や居酒屋などの外食、冷凍食品、さきいか、塩辛といった加工品をすべて含む「イカの総消費量」とは一致しません。
家庭で丸ごとのイカを買う機会は減っていても、寿司店では今も定番のネタです。複数の種類が流通し、冷凍や加工にも向いているため、魚介類の中では比較的出会いやすい存在であることに変わりはありません。
イカは10本足ではない?独特な体のつくり

イカは一般に「足が10本ある」と説明されます。ただし、生物の体のつくりとして見る場合は、8本の腕と2本の触腕に分けて考えます。
8本の腕と2本の触腕は役割が違う
口の周囲に並んでいる8本の腕は、捕まえた獲物を押さえたり、口元へ運んだりするために使われます。
残りの2本は、ほかの腕よりも長く伸びる触腕です。魚や甲殻類を見つけると触腕を勢いよく伸ばし、先端に集まった吸盤で獲物を捕らえます。
腕の中央には、鳥のくちばしに似た硬い口器があります。その奥には「歯舌」と呼ばれる細かな歯が並んだ器官があり、捕らえた獲物を小さく削りながら食べます。
刺身で食べている筒状の部分は「外套」
私たちが刺身や寿司で主に食べている筒状の部分は「外套」と呼ばれます。外套は筋肉質で、その内側には消化器官や生殖器官、墨袋などが収まっています。
イカの独特な歯切れや弾力は、この外套を構成する筋肉から生まれます。同じイカでも、繊維に対して包丁を入れる方向や切り込みの細かさによって、口に入れたときの食感が変わります。
透明な板は背骨ではなく、貝殻の名残
イカをさばくと、胴の中から透明なプラスチック板のようなものが出てきます。一般には軟骨と呼ばれることもありますが、これは背骨ではなく、祖先が持っていた貝殻の名残と考えられている内殻です。
柔らかい外套の形を保ち、泳ぐときに体を支える役割があります。
コウイカの仲間は、より厚く石灰質の「甲」を持っています。海岸に白い舟形の物体が落ちていることがありますが、これはコウイカの甲が打ち上げられたものです。
| 体の部分 | 特徴 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 外套 | 筋肉質な筒状の部分 | 内臓を包み、海水を押し出す |
| 8本の腕 | 口の周囲に並ぶ | 獲物を押さえて口へ運ぶ |
| 2本の触腕 | 長く伸び、先端に吸盤が集まる | 離れた獲物を捕らえる |
| 漏斗 | 外套の下にある管状の器官 | 海水を噴き出して移動する |
| 内殻 | 透明または白い板状の構造 | 柔らかい体を支える |
| くちばし | 腕の中央にある硬い口器 | 獲物を噛み切る |
イカは心臓が3つ、血液は青い
イカを含む頭足類には、合計3つの心臓があります。私たちにとっては驚くような構造ですが、活発に泳ぎ回るイカの体を支えるために欠かせない仕組みです。
全身用が1つ、エラ用が2つ
3つのうち1つは、酸素を含んだ血液を全身へ送る体心臓です。残りの2つは左右のエラの付け根にあり、酸素の少ない血液をエラへ送り込む鰓心臓として働きます。
イカは外套の中に海水を取り込み、漏斗から勢いよく噴き出して移動します。急加速や方向転換を繰り返すため、多くの酸素を必要とします。3つの心臓を使う循環システムが、その活発な動きを支えています。
血液が青いのは銅を使って酸素を運ぶため
人間の血液では、鉄を含むヘモグロビンが酸素を運びます。イカの血液では、銅を含む「ヘモシアニン」が酸素を運びます。
酸素と結びついたヘモシアニンは青みを帯びるため、イカの血液は青く見えます。3つの心臓と青い血液は、イカの豆知識の中でも特に話のネタにしやすい特徴です。
イカはなぜ一瞬で色を変えられるのか
生きているイカは、白、赤褐色、濃い茶色などへ瞬時に体色を変えます。水槽の中で点滅するように模様を変えたり、釣り上げられた直後に色が濃くなったりするのは、皮膚に特殊な仕組みがあるためです。
色素胞を広げたり縮めたりしている
イカの皮膚には「色素胞」と呼ばれる小さな袋状の細胞があります。その周囲には放射状に筋肉が付いています。
筋肉が色素胞を引っ張って広げると、皮膚に色が現れます。筋肉を緩めると色素胞が小さくなり、色も薄くなります。
多数の色素胞を細かく動かすことで、イカは体全体の色だけでなく、縞模様や斑点まで短時間で変えられます。
体色変化はカモフラージュだけではない
イカが色を変える目的として有名なのが、海底や岩場に溶け込むカモフラージュです。しかし、体色変化にはほかにも複数の役割があります。
- 捕食者から見つかりにくくする
- 獲物へ近づく際に姿を目立たなくする
- 仲間へ求愛や威嚇の合図を送る
- 驚きや興奮に応じて模様を変える
- 体の輪郭を分かりにくくする
「赤くなったから怒っている」というように、色だけで単純に感情を判断することはできません。周囲の明るさ、海底の模様、敵や仲間の存在など、さまざまな情報を受けて色を変えています。
イカの目は海中生活に特化している
イカの目は大きく、レンズ、網膜、瞳孔などを備えています。外見は人間の目に似ていますが、別の進化の道筋で生まれたものです。
人間より視力がよいとは単純に比較できない
元の記事では「イカの視力は人間以上」とされていましたが、水中と陸上では求められる視覚能力が異なります。そのため、視力検査の数字のように単純な優劣を付けることはできません。
イカは視覚を使って、小魚や甲殻類の動き、捕食者の影、周囲の明暗などを捉えます。特に薄暗い海や深海にすむ種類では、大きな目がわずかな光を取り込むために役立っています。
ダイオウイカの目は動物界最大級
深海にすむダイオウイカは、非常に大きな目を持つことで知られています。光の少ない深海では、遠くの発光や大型動物の動きを見つけることが生存につながります。
ダイオウイカの巨大な目は、単に体が大きいから発達したのではなく、暗い深海で周囲の変化を捉えるための重要な感覚器官だと考えられています。
イカの種類は驚くほど多い
売り場ではまとめて「イカ」と書かれていることがありますが、イカは一種類の生き物ではありません。世界には数百種の仲間が知られており、大きさ、生息場所、体形、泳ぎ方が異なります。
食用として流通する種類だけを見ても、歯切れのよいもの、柔らかいもの、身が厚いもの、ねっとりとした甘みを持つものなど、個性はさまざまです。
寿司でイカを食べ比べる面白さも、まさにこの種類の多さにあります。
スルメイカ|なじみ深く料理の幅が広い
スルメイカは、日本で古くから親しまれてきた代表的なイカです。細長い外套と比較的小さなヒレを持ち、日本近海を大きく回遊します。
刺身、寿司、塩辛、イカ焼き、煮物、天ぷら、するめなど、利用される料理の幅が広いことが特徴です。地域によっては「マイカ」と呼ばれることもあります。
刺身ではほどよい弾力とうま味があり、細造りにすると歯切れを楽しみやすくなります。
ヤリイカ|柔らかく上品な甘み
ヤリイカは、槍の穂先を思わせる細長い形をしています。ヒレが大きく、外套の中央付近まで広がっているため、スルメイカと見分けやすい種類です。
身は比較的柔らかく、歯切れも軽やかです。刺身や寿司にすると、強すぎない上品な甘みが感じられます。煮付けや天ぷらにも向いています。
ケンサキイカ|透明感と強い甘み
ケンサキイカは、透明感のある身と甘みで人気があります。地方や成長段階によって「シロイカ」「アカイカ」「マイカ」など、さまざまな名前で呼ばれます。
刺身や寿司では、柔らかさの中にほどよい弾力があり、噛むほど甘みが広がります。一夜干しにしても味が濃く、焼き物としても人気の高いイカです。
アオリイカ|肉厚でねっとりと甘い
アオリイカは幅広い外套を持ち、その周囲を大きなヒレが囲んでいます。身が厚く、刺身ではねっとりとした食感と濃い甘みを楽しめます。
鮮度のよい状態でも歯応えがありますが、適切に寝かせると角が取れ、よりねっとりとした舌触りになります。歯切れよりも身の厚さや甘みを味わいたい人に向いています。
味のよさから「イカの王様」と呼ばれることもありますが、正式な分類上の呼称ではありません。
コウイカ|厚い身と濃厚な味
コウイカは、丸みのある幅広い体と、体内にある厚い甲が特徴です。「スミイカ」と呼ばれることもあり、墨袋が発達しています。
身は肉厚で、表面に細かな包丁を入れると柔らかさと甘みが引き立ちます。寿司、刺身、天ぷら、炒め物などに使われます。
ホタルイカ|内臓ごと味わう小型種
ホタルイカは、成体でも数センチほどの小さなイカです。腕や腹部に発光器を持ち、青白い光を放ちます。
ほかのイカとは異なり、内臓を含めて丸ごと食べることが多いため、濃厚なうま味があります。酢味噌和え、沖漬け、炊き込みご飯などが代表的な食べ方です。
| 種類 | 食感の特徴 | 味の傾向 | おすすめ料理 |
|---|---|---|---|
| スルメイカ | 歯応えと弾力がある | うま味が強い | 刺身、塩辛、焼き物、するめ |
| ヤリイカ | 柔らかく歯切れがよい | 上品な甘み | 刺身、寿司、煮付け、天ぷら |
| ケンサキイカ | 柔らかさと弾力を併せ持つ | 甘みが強い | 刺身、寿司、一夜干し |
| アオリイカ | 肉厚でねっとりしている | 濃い甘み | 刺身、寿司、天ぷら、焼き物 |
| コウイカ | 厚みがあり、もっちりしている | 濃厚な味 | 刺身、寿司、天ぷら、炒め物 |
| ホタルイカ | 小さく柔らかい | 内臓を含む濃いうま味 | 酢味噌和え、沖漬け、炊き込みご飯 |
一番高級なイカは一つに決められない
高級イカとしてはアオリイカがよく挙げられます。しかし、常にアオリイカが最も高いわけではありません。
イカの価格は、種類だけでなく、産地、漁獲量、サイズ、季節、鮮度、活け締めの有無、輸送方法などで変わります。活きたケンサキイカやヤリイカ、ブランド化された産地のイカが高値になることもあります。
寿司や刺身で選ぶなら、値段だけでなく、どの食感を味わいたいかで決めるのがおすすめです。
- 新鮮な歯切れを楽しみたい:ヤリイカ、スルメイカ
- 透明感と甘みを楽しみたい:ケンサキイカ
- 肉厚なねっとり感を楽しみたい:アオリイカ
- もっちりした濃厚な身を楽しみたい:コウイカ
- 内臓を含む濃いうま味を楽しみたい:ホタルイカ
新鮮なイカと寝かせたイカは、どちらがおいしい?
イカのおいしさを考えるうえで興味深いのが、鮮度と食感の関係です。
「魚介類は新鮮であればあるほどよい」と思われがちですが、寿司や刺身では、必ずしも一つの状態だけが正解ではありません。
鮮度のよいイカは歯切れが魅力
鮮度のよいイカは、身に張りがあり、噛んだときに小気味よく歯が入ります。特に細造りや飾り包丁を入れた刺身では、イカらしい弾力を残しながら、すっと噛み切れる食感を楽しめます。
透き通った身の美しさも、新鮮なイカならではです。活き造りでは、皿の上でも色素胞が動き、体の色が変化することがあります。
少し寝かせると、ねっとり感が増す
適切な温度で時間を置くと、身の強い弾力が少しずつ落ち着き、舌にまとわりつくようなねっとり感が出てきます。甘みやうま味も感じ取りやすくなり、鮮度のよいイカとは異なるおいしさになります。
特にアオリイカやコウイカのような肉厚な種類では、少し寝かせたときの食感がよく合います。鮮度のよい歯切れも、寝かせたねっとり感も捨てがたく、どちらを好むかはその日の気分やイカの種類によって変わります。
ただし、ここでいう「寝かせる」は、寿司店などで温度や衛生状態を管理したうえで行うものです。家庭で生のイカを常温に置いておくこととはまったく異なります。
| 状態 | 食感 | 味わい | 向いている種類の例 |
|---|---|---|---|
| 鮮度のよい状態 | 張りがあり、歯切れがよい | すっきりした甘み | ヤリイカ、スルメイカ、ケンサキイカ |
| 適切に寝かせた状態 | 柔らかく、ねっとりする | 甘みとうま味を感じやすい | アオリイカ、コウイカ、ケンサキイカ |
イカの寿命は短い?1年で急成長する種類も多い
食用としてなじみ深いイカの中には、寿命が1年ほどしかない種類が少なくありません。
代表的なスルメイカは、ふ化してから成長、回遊、成熟、産卵までを約1年で行います。その短い生涯の中で小魚や甲殻類を食べ、急速に大きくなります。
捕食者であり、多くの動物の餌でもある
イカは小魚や甲殻類を捕らえる捕食者です。一方で、マグロ、ブリ、サメ、海鳥、イルカ、クジラなど、多くの動物に食べられます。
海の中では、獲物を捕らえる側であると同時に、大型動物の命を支える重要な餌でもあります。そのため、イカの増減は海の食物連鎖全体に影響します。
すべてのイカの寿命が1年というわけではなく、種類や生息環境によって異なります。大型の深海性イカには、数年生きると推定されているものもいます。
ジェット噴射で素早く逃げる
イカは外套を広げて海水を取り込み、筋肉を収縮させて漏斗から勢いよく噴き出します。その反動で体を動かすのが、ジェット推進です。
漏斗の向きを変えることで、進む方向も調整できます。普段はヒレを波打たせながらゆっくり移動し、敵から逃げるときや獲物を追うときにジェット推進で加速します。
タコとの違いから分かるイカの生態
イカとタコはどちらも頭足類ですが、体の形や生活場所、移動方法には違いがあります。
| 比較項目 | イカ | タコ |
|---|---|---|
| 腕 | 8本の腕と2本の触腕 | 8本の腕 |
| 体内構造 | 多くの種類に内殻がある | 基本的に硬い内殻を持たない |
| 主な移動方法 | 遊泳とジェット推進 | 海底を腕で移動し、必要時に泳ぐ |
| 体形 | 細長い、または幅広い外套を持つ | 丸みのある胴体を持つ |
| 暮らし方 | 海中を回遊する種類が多い | 岩場や海底で単独生活する種類が多い |
「イカとタコのどちらが賢いか」と比較されることもありますが、単純な順位は付けられません。
タコは腕を使って物を動かす行動で知られ、イカは視覚や体色変化を使った行動が発達しています。暮らし方が違えば、得意な能力も異なります。一つの迷路実験だけで、どちらの知能が高いと決めることはできません。
イカが人間の神経研究に貢献した
イカは、心臓や体色変化が不思議なだけではありません。人間を含む動物の神経が、どのように電気信号を伝えるのかを解明する研究にも大きく貢献しました。
巨大な神経線維を持っている
イカは敵から素早く逃げるため、外套の筋肉へ一斉に信号を送る太い神経線維を持っています。この「巨大軸索」は、人間の神経線維よりはるかに太く、内部に電極を入れて変化を測定しやすいという特徴があります。
アラン・ホジキンとアンドリュー・ハクスリーは、イカの巨大軸索を使い、ナトリウムイオンやカリウムイオンの移動によって神経の電気信号が生まれる仕組みを明らかにしました。
この研究は現代の神経科学の基礎となり、両者はジョン・エックルスとともに1963年のノーベル生理学・医学賞を受賞しています。
寿司店で何気なく食べているイカが、人間の脳や神経を理解するための重要な研究材料だったというのは、生態と科学を結び付ける面白い豆知識です。
イカの栄養|低脂質でタンパク質を取りやすい
イカは脂質が少なく、タンパク質を含む魚介類です。ビタミンB12、亜鉛、銅、セレンなどの栄養素も含まれています。
イカの栄養成分として特によく知られているのがタウリンです。タウリンは人間の体内にも存在し、胆汁酸との結合や浸透圧の調整などに関わっています。
ただし、イカを食べれば疲労や肝機能、血圧が必ず改善するわけではありません。「タウリンが豊富だから病気を予防できる」と断定するのではなく、タンパク質やミネラルを含む食品の一つとして考えるのが適切です。
刺身・天ぷら・塩辛で特徴が変わる
| 食べ方 | 魅力 | 気を付けたい点 |
|---|---|---|
| 刺身・寿司 | 種類ごとの甘みや食感が分かりやすい | 生食用として処理されたものを選ぶ |
| 焼き物・炒め物 | 香ばしさとうま味が加わる | 長時間加熱すると硬くなりやすい |
| 天ぷら | 衣と身の食感の違いを楽しめる | 水分による油はねに注意する |
| 煮物 | 煮汁の味が入り、ご飯に合わせやすい | 煮すぎると縮んで硬くなりやすい |
| 塩辛 | 内臓を生かした濃厚な発酵風味 | 塩分が多いため量を調整する |
| するめ | うま味と歯応えが凝縮される | 生のイカより栄養や塩分も凝縮される |
元の記事には、刺身ならタウリンが100%残り、天ぷらなら約80%残るという表がありました。しかし、栄養成分の変化は、イカの厚さ、加熱温度、時間、煮汁を食べるかどうかなどで変わります。調理法だけで一律の残存率を示すことは難しいため、具体的な割合は削除しています。
旬と産地で変わるイカの味わい

イカの旬は、種類や産地によって異なります。一年を通じて何らかの種類が水揚げされるため、季節ごとに違ったイカを楽しめます。
| 種類 | 流通が増えやすい時期の目安 | 味わいの特徴 |
|---|---|---|
| スルメイカ | 夏から秋を中心に地域差がある | 若い個体は柔らかく、成熟すると身が厚い |
| ヤリイカ | 冬から春 | 柔らかく上品な甘み |
| アオリイカ | 春から初夏、秋 | 肉厚でねっとりした甘み |
| ケンサキイカ | 初夏から秋を中心に地域差がある | 透明感があり甘みが強い |
| ホタルイカ | 春 | 内臓を含む濃厚なうま味 |
| コウイカ | 秋から春を中心に地域差がある | 厚みがあり加熱しても存在感がある |
「スルメイカは夏」「アオリイカは春」と一つの季節へ固定するより、産地と漁獲時期を合わせて見るほうが正確です。
同じ種類でも、若い時期と成熟した時期では大きさや身の厚さが変わります。旬を知ることは、単に安く買うためだけでなく、その時期ならではの食感を選ぶ手がかりになります。
新鮮なイカの見分け方
新鮮なイカは必ず透明とは限らない
「透明なイカほど新鮮」といわれますが、皮が付いた状態と、皮をむいた身では見え方が異なります。
生きているイカは色素胞を動かしているため、赤褐色や濃い茶色に見えることがあります。時間がたつと色素胞の働きが弱くなり、体色が白っぽくなります。
一方、皮をむいた身は、新鮮なほど透明感があります。売り場では色だけで判断せず、目、張り、におい、ドリップなども合わせて確認します。
- 目の形が崩れておらず、濁りが少ない
- 外套に張りと弾力がある
- 皮に光沢があり、乾燥していない
- 腕や吸盤がだらりと崩れていない
- 強い生臭さや不自然なにおいがない
- パック内に大量のドリップが出ていない
生イカと冷凍イカは優劣ではなく用途で選ぶ
冷凍イカは生イカより品質が低いと思われがちですが、漁獲後すぐに急速冷凍された商品もあります。
時間がたった未冷凍のイカよりも、状態のよい段階で冷凍されたイカのほうが、解凍後の品質が安定していることもあります。
- 刺身・寿司:生食用として管理された生イカまたは冷凍イカ
- 煮物:下処理済みの冷凍イカも使いやすい
- 炒め物:水分をよく拭き、短時間で加熱する
- 天ぷら:薄皮と水分を処理して油はねを防ぐ
- 塩辛:鮮度と衛生管理が重要なため市販品も選択肢になる
冷凍イカは冷蔵庫内でゆっくり解凍すると、水分が急激に流れ出るのを抑えやすくなります。半解凍の状態なら、刺身やイカリングも均一な幅に切りやすくなります。
刺身や寿司で食べるときのアニサキス対策
イカを生で食べる場合は、鮮度だけでなく寄生虫への対策も必要です。スルメイカなどには、アニサキスの幼虫が寄生している場合があります。
アニサキスは内臓にいることが多く、時間の経過とともに筋肉へ移動する場合があります。丸ごとのイカを購入したときは、冷えた状態で持ち帰り、早めに内臓を取り除きます。
- 生食用として適切に処理された商品を選ぶ
- 内臓を長時間付けたままにしない
- 明るい場所で身を目視する
- 必要に応じて冷凍または加熱された商品を選ぶ
- 酢、塩、しょうゆ、わさびだけを対策にしない
アニサキスは、一般的な料理で使う程度の酢や塩、しょうゆ、わさびでは死滅しません。家庭で刺身にする場合は、「新鮮だから安全」と考えず、生食用として管理されたものを選ぶことが基本です。
魚介好きに話したくなるイカの豆知識
イカ墨は目隠しだけではない
イカは敵に襲われると墨を吐いて逃げます。墨で視界を遮るだけでなく、粘り気のある墨を塊として放出し、自分の分身のように見せる種類もいます。
捕食者が墨へ気を取られている間に、イカは体色を薄くし、ジェット推進でその場を離れます。
イカの脳は食道を囲むように配置されている
イカの脳は腕の付け根付近にあり、食道を囲むように配置されています。
硬く大きな食べ物をそのまま飲み込むと神経系を圧迫するおそれがあるため、くちばしと歯舌を使って小さくしてから飲み込みます。
ホタルイカは体の下側を光らせて影を消す
ホタルイカは腕や腹部に多数の発光器を持っています。青白い光は、仲間との合図や敵への威嚇などに使われると考えられています。
さらに、海面から差し込む光に合わせて腹側を光らせることで、下から見上げた捕食者に自分の影を見つけられにくくする働きもあるとされています。
イカの吸盤には歯のようなリングがある
多くのイカでは、吸盤の縁に硬い角質のリングがあります。リングには小さな歯のような突起が並び、捕らえた獲物が逃げにくい構造になっています。
タコの柔らかい吸盤とは見た目も構造も異なります。
「するめ」と「あたりめ」は基本的に同じもの
イカを乾燥させた食品が「するめ」です。しかし、「する」にはお金を失うという意味もあるため、縁起を担いで反対の意味を持つ「当たり」に置き換え、「あたりめ」と呼ぶようになったとされます。
祝い事では「寿留女」という当て字も使われます。日持ちがよく、噛むほど味が出ることから、結納などの縁起物として扱われてきました。
「イカ」の名前の由来は一つに決まっていない
イカという名前には、「いかめしい姿から生まれた」「古い言葉が変化した」など、複数の説があります。
元の記事では「いかめしい」が最も有力な語源とされていましたが、語源は確定していません。「諸説ある」と紹介するのが正確です。
まとめ|イカは鮮度と種類で味が変わり、生態を知るとさらに面白い
イカは寿司や刺身で身近な食材ですが、生き物として見ると不思議な特徴にあふれています。
- 8本の腕と、獲物を捕らえる2本の触腕を持つ
- 全身用とエラ用を合わせて3つの心臓がある
- 銅を含むヘモシアニンによって血液が青く見える
- 色素胞を使って体色や模様を瞬時に変える
- 外套へ取り込んだ海水を噴射して泳ぐ
- スルメイカ、ヤリイカ、アオリイカなどで味と食感が異なる
- 寿命が1年ほどしかない種類も多い
- 巨大な神経線維が神経科学の発展に貢献した
味の面でも、イカには一つの正解がありません。鮮度のよいイカが持つ、すっと噛み切れる歯切れ。適切に寝かせたイカが持つ、ねっとりとした舌触り。どちらもイカだからこそ楽しめる食感です。
さらに、ヤリイカの軽やかな歯切れ、ケンサキイカの透明感と甘み、アオリイカの肉厚なねっとり感、コウイカのもっちりした身など、種類によって味わいは変わります。
日本の家庭で購入されるイカの量は以前より減り、現在はサケ、マグロ、ブリなどが生鮮魚介類の購入量上位を占めています。それでも、イカは寿司店、鮮魚売り場、冷凍食品、加工品まで、さまざまな場所で出会える身近な魚介類です。
次に寿司店でイカを注文するときは、種類にも注目してみてください。鮮度のよい歯切れを楽しむのか、寝かせたねっとり感を楽しむのか。味わい方の違いが分かると、いつもの一貫がさらに面白くなります。

