じゃがいもの豆知識を知ると、料理の選択肢がもっと広がる
カレー、ポテトサラダ、肉じゃが、コロッケ、フライドポテト、ポテトチップス。じゃがいもは、家庭料理からお菓子まで幅広く使われている身近な食材です。
私自身、じゃがいもを食べるならカレーやポテトサラダが定番です。子どもの頃はポテトチップスとフライドポテトが大好きでした。今でもじゃがいも料理は身近ですが、昔に比べて肉じゃがを食べる機会が減ったように感じるのは、少し残念なところです。
じゃがいもの魅力は、安くて使いやすく、子どもにも好まれやすいことだけではありません。品種によってホクホク、しっとり、ねっとりと食感が異なり、白、黄色、赤、紫など、切った断面の色までさまざまです。
一方で、芽や緑色になった部分には天然毒素が多く含まれることがあり、保存方法や下処理には注意が必要です。
この記事では、男爵いもとメークインの違い、カラフルな品種、切った断面が変色する理由、芽に含まれる毒、冷蔵庫での保存方法など、人に話したくなるじゃがいもの豆知識を紹介します。
じゃがいもは品種によって料理の仕上がりが変わる
男爵いもはポテトサラダやコロッケ向き
日本で特に身近なじゃがいもの一つが男爵いもです。
丸みのある形と表面の深いくぼみが特徴で、加熱するとホクホクとした粉質の食感になります。つぶしたときに軽く仕上がるため、ポテトサラダ、コロッケ、マッシュポテト、粉ふきいもなどに向いています。
私自身、スーパーでじゃがいもを買うときに品種を細かく使い分けることはほとんどなく、選ぶのは男爵いもが中心です。
男爵いもは煮崩れしやすいといわれますが、それを欠点と考える必要はありません。カレーに入れれば少し溶けたじゃがいもがルーにとろみを加え、家庭的な味にしてくれます。
形をきれいに残したい料理には不向きな場合がありますが、ホクホク感を楽しみたいなら、男爵いもは非常に使いやすい品種です。
メークインはカレーや肉じゃがで形を残しやすい
メークインは、細長い楕円形となめらかな表面が特徴です。
男爵いもよりもしっとりとした粘質の肉質で、加熱しても形が崩れにくいため、カレー、シチュー、肉じゃが、煮物などに向いています。
特に、完成した肉じゃがでじゃがいもの角をきれいに残したい場合や、カレーを翌日まで煮込みたい場合には、メークインを選ぶと失敗しにくくなります。
農林水産省や農畜産業振興機構も、男爵いもを粉質でコロッケやポテトサラダ向き、メークインを粘質で煮込み料理向きの品種として紹介しています。
男爵とメークイン以外にも個性的な品種がある
スーパーでよく見かけるのは男爵いもとメークインですが、日本ではほかにも多くの品種が栽培されています。
| 品種 | 食感や見た目 | 向いている料理 |
|---|---|---|
| 男爵いも | 白い果肉でホクホクした粉質 | ポテトサラダ、コロッケ、マッシュポテト |
| メークイン | しっとりして煮崩れしにくい | カレー、肉じゃが、シチュー |
| キタアカリ | 黄色い果肉で甘みを感じやすい | 蒸しいも、ポテトサラダ、コロッケ |
| インカのめざめ | 濃い黄色で栗のような風味 | 蒸し料理、フライドポテト、煮物 |
| とうや | なめらかで比較的煮崩れしにくい | 煮物、炒め物、スープ |
| シャドークイーン | 切った中まで濃い紫色 | サラダ、ポタージュ、菓子、チップス |
同じポテトサラダでも、男爵いもならホクホクとした家庭的な味になり、キタアカリなら黄色がかった色と甘みのある仕上がりになります。
じゃがいもは、品種を一つ変えるだけで、同じ料理でも食感や見た目が変わる食材です。種類を知るほど、料理の選択肢も広がります。
じゃがいもを切るとわかる断面の面白い豆知識
じゃがいもの中身は白だけではない
一般的な男爵いもやメークインの断面は白から淡い黄色ですが、じゃがいもの果肉の色は品種によって大きく異なります。
キタアカリは黄色、インカのめざめはオレンジに近い濃い黄色です。さらに、ノーザンルビーは赤色、シャドークイーンは濃い紫色の果肉を持っています。
シャドークイーンやノーザンルビーの色は皮だけではなく、中まで鮮やかです。その色を生かしてポテトサラダ、ポタージュ、ニョッキ、チップスなどにすると、着色料を使わなくても印象的な料理になります。
切った断面が茶色くなっても毒が増えたわけではない
じゃがいもを包丁で切ったまま置いておくと、断面が茶色や灰色に変わることがあります。
これは、じゃがいもに含まれる成分が酵素の働きによって変化するためです。りんごやバナナを切ったまま置いたときに色が変わるのと似た現象で、ソラニンやチャコニンなどの毒素が増えたことを示すものではありません。
変色を防ぎたいときは、切ったじゃがいもを短時間水にさらします。ポテトサラダやフライドポテトなど、白くきれいに仕上げたい料理では特に有効です。
ただし、長時間水に漬け続けると、水に溶けやすい栄養素が流出しやすくなります。変色を防ぐことが目的なら、必要以上に長くさらす必要はありません。
農林水産省も、切ったあとに起こる褐色変化は酵素の働きによるもので、毒素の量とは関係がないと説明しています。
切った瞬間から黒や茶色なら内部障害の可能性もある
包丁を入れた直後から、じゃがいもの中心が茶色や黒色になっていることもあります。
これは、栽培中の水分不足や保存中の酸素不足などによって起こる内部障害の可能性があります。切ってから時間がたって起こる変色とは別のものです。
内部の茶色や黒色は、必ずしも天然毒素が増えたことを示すものではありません。ただし、変色した部分は食感や味が悪くなっている場合があるため、取り除いて使うとよいでしょう。
腐ったにおい、ぬめり、汁が出ているなど、明らかな劣化が見られる場合は使用を控えてください。
じゃがいもの芽にはどんな毒がある?
芽や緑色の皮にはソラニンやチャコニンが多い
じゃがいもの芽や、光に当たって緑色になった皮には、ソラニンやチャコニンと呼ばれる天然毒素が多く含まれることがあります。
これらを多く摂取すると、吐き気、腹痛、下痢、頭痛、めまいなどの食中毒症状を起こす可能性があります。
緑色そのものはクロロフィルという葉緑素の色であり、毒素の色ではありません。しかし、緑色になっていることは、じゃがいもが長時間光に当たった目安になります。光に当たると天然毒素も増えやすいため、注意が必要です。
芽は表面だけでなく周囲まで深く取り除く
じゃがいもに芽が出ている場合は、芽の先だけを折ればよいわけではありません。
包丁の角やピーラーの芽取り部分を使い、芽の根元と周囲を含めて深めにえぐり取ります。皮が緑色になっている場合は、緑色が見えなくなるまで厚めにむきましょう。
中心部まで緑色になっているものや、全体の広い範囲が緑色になっているものは、無理に食べないほうが安全です。
ソラニンやチャコニンは熱に比較的強く、普通にゆでるだけでは十分に減らない場合があります。「加熱するから芽を取らなくても大丈夫」と考えず、調理前に取り除くことが重要です。
苦みやえぐみを感じたら食べるのをやめる
じゃがいもを食べたときに、普段とは違う強い苦みや、舌に残るえぐみを感じた場合は注意が必要です。
天然毒素が多く含まれているじゃがいもは、苦みやえぐみを感じることがあります。その場合は「味付けでごまかせば食べられる」と考えず、じゃがいもだけでなく、一緒に調理した料理も食べるのをやめましょう。
じゃがいもを食べたあとに吐き気、腹痛、下痢などの症状が出た場合は、医療機関へ相談してください。
冷蔵庫の奥でじゃがいもを発芽させない保存方法
冷蔵庫に入れても芽が出ることはある
私はじゃがいもを冷蔵庫の奥に入れたまま忘れ、気づいたときには芽が伸びているということがよくあります。
じゃがいもは涼しい場所に置けば永久に保存できるわけではありません。収穫から時間がたてば、冷暗所や冷蔵庫の中でも芽が出ることがあります。
保存場所を奥深くにしてしまうと、光は防げても存在を忘れやすくなります。紙袋や新聞紙で光を遮りつつ、野菜室の手前など、定期的に確認できる場所へ置くのがおすすめです。
基本は光を避けた涼しく風通しのよい場所
じゃがいもは、光が当たらず、涼しく、風通しのよい場所で保存するのが基本です。
紙袋、新聞紙、段ボール箱などに入れ、できるだけ暗い状態を保ちます。透明なビニール袋に入れたまま明るい場所へ置くと、緑色になりやすいため注意しましょう。
気温が高い季節や、室内に涼しい場所がない場合は、冷蔵庫の野菜室を利用できます。ただし、大量に買って長期間忘れるよりも、使い切れる量をこまめに購入するほうが確実です。
冷蔵したじゃがいもを揚げるときは注意する
じゃがいもを低温で長期間保存すると、でんぷんの一部が糖へ変わり、甘みが強くなることがあります。
このじゃがいもをフライドポテトや炒め物などの高温調理に使うと、アクリルアミドという物質ができやすくなります。また、糖が増えているため表面が焦げやすくなります。
長く冷蔵していたじゃがいもは、煮物や蒸し料理に使うのが向いています。揚げ物や炒め物に使う場合は、農林水産省では調理前に一週間ほど常温へ置き、増えた糖を減らす方法も紹介しています。
じゃがいもの栄養は調理方法によって大きく変わる
じゃがいもにはビタミンCやカリウムが含まれる
じゃがいもは主に炭水化物を含む食材ですが、ビタミンCやカリウムも含まれています。
日本食品標準成分表によると、皮をむいた生のじゃがいも100g当たりのエネルギーは59kcal、カリウムは410mg、ビタミンCは28mgです。品種や栽培条件、保存期間、調理方法によって実際の数値は変わります。
じゃがいものビタミンCは、でんぷんに囲まれているため加熱後もある程度残ります。ただし、「加熱してもまったく壊れない」という意味ではありません。蒸したじゃがいもでは、生の状態よりビタミンC量が少なくなります。
じゃがいも自体は脂質が少ない
じゃがいもは太りやすいという印象を持たれがちですが、じゃがいも自体に含まれる脂質は多くありません。
カロリーが高くなりやすいのは、油で揚げたり、バター、マヨネーズ、生クリーム、チーズなどを組み合わせたりするためです。
例えば、蒸したじゃがいもとフライドポテトでは、同じ100gでもエネルギー量が大きく異なります。ダイエット中に取り入れるなら、蒸す、ゆでる、スープにするなど、油を多く使わない調理方法が向いています。
ポテトサラダは具材によって食べ応えが変わる
じゃがいも料理の中でも、ポテトサラダは家庭によって作り方が大きく異なる料理です。
きゅうり、玉ねぎ、にんじん、ハム、卵などを加えれば、食感や栄養のバランスも変わります。マヨネーズの量を控えたい場合は、ヨーグルトや酢、粒マスタードを組み合わせると、重くなりすぎず味をまとめられます。
男爵いもを完全につぶしてなめらかにするのか、少し形を残すのかによっても印象が変わります。同じ品種でも、つぶし方や味付け次第で何通りものポテトサラダを作れるのが面白いところです。
新じゃがと普通のじゃがいもは何が違う?
新じゃがは特定の品種名ではない
新じゃがは、「新じゃが」という品種の名前ではありません。
収穫後に長期間貯蔵せず、比較的早く出荷されるじゃがいもの総称です。そのため、男爵いも、メークイン、ニシユタカなど、さまざまな品種の新じゃががあります。
新じゃがは皮が薄く、水分が多くてみずみずしいのが特徴です。小ぶりなものを皮ごと蒸したり、煮っころがしや素揚げにしたりすると、新じゃがらしい食感を楽しめます。
新じゃがの時期は産地によって異なる
新じゃがと聞くと春の食材という印象がありますが、出荷時期は産地によって異なります。
温暖な長崎県や鹿児島県などからは春を中心に新じゃがが出荷され、北海道では夏から秋にかけて収穫されたじゃがいもが出回ります。
北海道産の貯蔵じゃがいもと、各地から出荷される新じゃがが時期をずらして流通することで、日本ではほぼ一年中じゃがいもを購入できます。
新じゃがは長期保存より早めに食べる
新じゃがは水分が多く皮も薄いため、長期保存にはあまり向きません。
購入後は光を避けた涼しい場所に置き、できるだけ早めに使い切りましょう。皮ごと食べる場合も、表面をよく洗い、芽や緑色の部分がないか確認します。
新じゃがだからソラニンやチャコニンの心配がないというわけではありません。小さく未熟な状態で収穫された家庭菜園のじゃがいもには、天然毒素が多く含まれる場合もあるため注意が必要です。
名前や育ち方にも意外なじゃがいもの豆知識がある
「じゃがいも」はジャカルタから来た芋が由来
じゃがいもの原産地は南米のアンデス地方とされています。
日本へは17世紀初めごろ、現在のインドネシア・ジャカルタ周辺を経由して伝わりました。当時のジャカルタは「ジャガタラ」などと呼ばれており、「ジャガタラから来た芋」が「ジャガタライモ」、さらに縮まって「じゃがいも」になったといわれています。
男爵いもの「男爵」は本当に男爵が由来
男爵いもの「男爵」は、ホクホクした見た目を表す言葉ではありません。
北海道でこの品種の栽培を広めた川田龍吉男爵にちなんで名付けられました。普段は料理名のように聞こえますが、実在した人物の爵位がそのまま品種名に残っています。
一方のメークインは英語の「May Queen」に由来する名前です。日本で長く親しまれている二大品種ですが、名前の生まれ方はまったく異なります。
食べている部分は根ではなく地下の茎
じゃがいもは土の中から掘り出すため、根が大きくなったものと思われがちです。
しかし、私たちが食べているじゃがいもは、地下に伸びた茎の先端が太くなった部分です。表面にある「芽」から新しい茎や葉が伸びるのも、じゃがいもが茎の一部であることを示しています。
ちなみに、さつまいもは根が太くなったものです。同じ「いも」でも、食べている部分は同じではありません。
じゃがいもは安くて子どもにも人気の万能食材
じゃがいもは、カレーやポテトサラダのような家庭料理だけでなく、コロッケ、スープ、グラタン、ガレット、ニョッキ、フライドポテト、お菓子など、幅広い料理に使える食材です。
男爵いもだけでも十分に多くの料理を作れますが、メークイン、キタアカリ、インカのめざめ、カラフルな品種まで知ると、料理の選択肢はさらに広がります。
子どもの頃にポテトチップスやフライドポテトが好きだった人が、大人になってからカレーやポテトサラダ、新じゃがの煮物を楽しむようになることもあります。じゃがいもは、年齢によって好きな食べ方が変わっても、長く食卓に残り続ける食材です。
最近あまり肉じゃがを食べていないと感じたら、久しぶりに作ってみるのもよいでしょう。その際は、いつもの男爵いもで少し煮崩れた家庭的な味を楽しむのか、メークインで形をきれいに残すのかを選べます。
芽や緑色の部分を正しく取り除き、光を避けて保存すれば、じゃがいもは日々の食事で頼りになる存在です。
次にスーパーのじゃがいも売り場を訪れたら、値段や大きさだけでなく、品種名や皮の色にも注目してみてください。今まで同じに見えていたじゃがいもが、それぞれ違った料理の可能性を持つ食材に見えてくるはずです。

